一ノ瀬さん家の家庭事情。
「家まで送るよ。」

浅丘君の一言に、あたしは思わず転びそうになった。

「い、いいよ!平気!ここからそんなに遠くないし、一人で…」

「…俺が、もうちょっと一緒にいたいんだ。…ダメ?」

っ…

そんな顔してだめ、なんて聞かれたら、断れるわけなんかない。

むしろあたしだってもう少し、もっと長く一緒にいたいって思ってるんだから。

今日は確かりっちゃん、バイトだったはず。

まだ帰ってきてないよね?

そして見えてきた見慣れた家。

もう少しでお別れだ。

今日は人生初のことがたくさんあったなぁ。

初めての彼氏の家に行って、浅丘君のお母さんや恵海ちゃんや涼太君にも会えて。

初めてプラネタリウムを見た。

隣にはずっと好きだった人。

夢みたいな一日はあっという間に終わっちゃうんだ。

「本当にありがとう!」

「こちらこそ、…これからもよろしくな!」

そうだ、今日だけで終わりなんじゃないんだ。
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