一ノ瀬さん家の家庭事情。

「コーヒーしかないけど、どうぞ。」

「すみません…」

先生のマンションについてきちゃったけど、これってまずいんじゃ…

いくら叔父と姪の関係だからって先生なのは先生だし…

「で、何があったの？」

先生はあたしの前に座って、コーヒーを飲みながら言った。

「実は…」

あたしはりっちゃんとの喧嘩の経緯を話した。

「あはは、へえ、そっか。」

「笑いごとじゃありませんよ！」

「ごめん、ごめん。…でも俺はそういうの、少し羨ましい。」

え？

羨ましいって、喧嘩が？

「俺が物心ついた時にはもう兄貴とは喧嘩するような年でもなかったしね。」

そっか、暁君と先生は兄弟喧嘩とかしなさそうだもん。

「愛の気持ち、すごくわかる。人を好きになるって気持ちは抑えられるものでもないし、それは自由にしていいと思う。」

先生は優しく言った。

「でも律君は本当に愛のこと、大切に思ってるんだよ。それだけはわかってあげて欲しいかな。」