一ノ瀬さん家の家庭事情。
それは、あたしだってわかってる。

今までのりっちゃんのあたしにしてくれたことを考えたら、感謝してもしきれないほどだもん。

でもだからって彼氏作ることも禁止なんて、嫌だ。

大好きなりっちゃんだからこそ、あたしの好きになった人、ちゃんと知ってほしいのに。

あたしだってりっちゃんの好きになったひと、ひなのさんが家に来てくれたとき、すごく嬉しかった。

だから、あたしも…

「携帯、鳴ってるよ。」

ポケットに入っていた携帯が震えてる。

開いてみると、そこにはたくさんのメールと着信。

「もしもし…?」

『もしもし、じゃないよ。…律兄!愛でた!』

電話口の向こうの玲は相当怒ってるっぽい。

「あの、玲、ごめんね…」

『ほんと、バカじゃないの?とりあえず、今どこ?』

「えっと、神崎先生の家に…」

『はあ?…迎えに行くから、待ってて。』

そう言うと、玲はあたしが返事をする前に電話を切ってしまった。
< 381 / 391 >

この作品をシェア

pagetop