一ノ瀬さん家の家庭事情。
「今日は真兄の当番の日でしょ!」

「なんだよ、助けてやったお兄様に向かってその口は。」

真兄はジリジリとあたしの顔の前まで近づいてきた。

「…愛、告白のこと、律兄に言っちゃおうかなー…」

っ…!!

「そっ、それだけはやめて!」

りっちゃんになんてばれたら、絶対にめんどくさいことになるもん!

「はい、いいこいいこー。今日は俺、親子丼の気分だな!」

くっそーー!

完全にはめられた!

いっつもこうなんだから!

あたしはその嬉しそうに鼻歌を歌い出す横顔をきっと睨んだ。


あたしの名前は一ノ瀬愛。

三日前に高校に入学したばかりの15歳。

身長が152cmから伸びないことが悩みの、どこにでもいるごく普通の女の子。

と言いたいところだけど、あたしにはもうひとつ、最大の悩みがある。

それは…

「ただいまー。」

玄関のドアを開けると、バタバタと激しい音がして誰かがあたしに飛びついた。

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