一ノ瀬さん家の家庭事情。
高校に入ってから友達と遊ぶの、初めて。

楽しみ!

外に出ると、嬉しくてつい走ってしまうほど。

駅の周辺は今日が土曜日なだけあって人がたくさんいた。

明日はお休みだから、みんな外食に出たりしてるのかな。

「えっと、ほのちゃん…」

「一ノ瀬!」

肩を叩かれて、振り返るとそこにいたのは浅丘君。

「あれ、浅丘君!」

「寺嶋に頼まれた。来る前に一ノ瀬を一緒に連れてきてって。行こ!」

そっか、なるほど!

一人で感心していると、人混みに押しつぶされそうになる。

背が低いから、余計に押しつぶされちゃうんだよね。

このままじゃ浅丘君とはぐれちゃう。

せっかく迎えに来てくれたのに!

必死でその背中に付いて行こうとするけど、やっぱりあたしは前になかなか進めない。

するとぐいっと手を引っ張られた。

「大丈夫?」

「うん…ありがとう。」

「…行こっか。」

浅丘君は手を掴んだまま、歩き始めた。

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