一ノ瀬さん家の家庭事情。
多分、一生かかってもわかんない。


「ただいまー…」

家に帰ると、珍しく誰もリビングにいなかった。

でも玄関に玲の靴はあったから、玲はいるはず。

「玲?」

あたしたちの部屋にも玲の姿はなかった。

どこにいるんだろう…

そう思って部屋着に着替えていると、ガタンと音がして玲がお父さんの部屋から出てきた。

「玲!ただいま!どこにいるのかと思ったよ。」

「…おかえり。てか、その格好…」

玲があたしの全身を嫌そうに見つめる。

「うわっ…!ごめん!」

着替えの途中で、半分しかTシャツをかぶってなかった。

いくら双子の妹でもこんなだらしない格好、見たくないもんだよね。

「お父さんの部屋で何してたの?」

すると一瞬、玲の無表情なポーカーフェイスが強ばった。

長年一緒にいるからこそわかる、玲のくせ。

どんなにいつも無表情で分りにくい玲でも、あたしにはわかる。
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