一ノ瀬さん家の家庭事情。
玲は慣れたように部屋に入ると、引き出しの中から二冊の本を取り出した。

よく見るとそれは母子手帳で。

表紙にはコウノトリと赤ちゃんの可愛い絵が描いてある。

「ほら、見ろよ。これが真実なんだ。」

な、に…

真実って何?

なんで母子手帳なんか…

どうしよう、なんだか心臓をぎゅっと掴まれたように胸が苦しい。

バクバク、動機が激しくなっていく。

震える手で二つの母子手帳を拾った。

そのうちの一つのページをめくると、持ち主の名前を書く欄があった。

そこにかかれていたことに、あたしは目を見張った。

そして、母子手帳を床に落とした。

「な、なんで…どういう、こと…?」

そこに書かれていたのは…


父親の名前:神崎暁(かんざきあき)

母親の名前:神崎唯(かんざきゆい)

出生児名:神崎愛(かんざきあい)


玲を見ると、苦しそうな顔で笑った。

「俺と愛は、双子じゃない。兄妹じゃないんだよ。」

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