一ノ瀬さん家の家庭事情。
今まで家族として、兄妹として育ってきたあたしは、本当の妹じゃなかったんだ。

「…っ…はあ…ふっ…うう…」

息が苦しくて、うまく呼吸ができない。

苦しいよ…助けて…

「愛?ちょっと…!」

玲があたしの異変に気がついて、あたしの肩を支える。

「これ、口元に覆って!」

ビニール袋を口元に当てられて、ゆっくり息を吸ったり吐いたりしていると少し落ち着いた。

「…だから言いたくなかった。ごめん…愛。」

どうして玲が謝るの?

玲は何も悪くない。

玲の優しさだったんだ。

あたしが知ったら、傷つくからって。

不器用な玲の、優しさだった。

「…愛…、泣かないで。…ごめん、ごめんな。」

玲の声も震えてる。

玲のあたしの肩を抱く腕も震えてる。

普段滅多に泣いたりしない玲。

その玲が、泣いている。

「俺…どうすればいい?わかんないよ。愛…」

玲だって悩んでる。

こんなことを急に知って。
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