あなたに伝えたいこと


「そろそろ時間だし、行くか!!」


そう言って、霞の間へと急いだ。

スリッパを履き、階段を降りていた時だ。
何か無いことに気がついた。


「あっ!シャーペン忘れた!取りに行ってくる!!」


「早くしなよー先いってるからー」


美花の声を後ろに急いで階段をかけ上がった。


「あった!はやくしなきゃ…」


部屋に入り、シャーペンを取り廊下にでた。


(もう、誰もいないよ…)


そう思って階段へ行くと、誰かにぶつかった。


「うわぁ!!ごめんね!!」


そう言って顔を上げると、龍斗がいた。


「って龍斗か…」


「龍斗かって何だよ。てか、遅くね?」


ワイシャツを捲り、脇腹を掻いて気だるげにしていた。


「それ、お前が言うか?シャーペン忘れたんだよ。だらしない…」


「余計な世話だよ。場所どこだっけ?」


やはりとは思ったが、場所が分からずこやつはうろついていたのだろう。


「バぁカ。着いてきなさい!」


私が階段を下り始めたときだ。


(…え、何?)



龍斗が後ろから抱きついてきたのだ。


「龍斗??どうした?熱でもあるの?」


幼なじみということもあり、そこまでドキドキとかは無いが、小学生の低学年以来だったので少し驚いた。



あの時と比べて本当に大きくなったと思った。


でも、温かさは変わっていない。



こうされていると落ち着いてしまう。


(眠いな…)

「なぁ…奈美…」


数十秒後、ゆっくりと、龍斗が私の名前を耳元で囁いた。


「ん??」



そのあと、龍斗は何かを決心したかのように、ハグをしている腕に力を入れた。


そして私の肩に顎を乗せてきた。


そのあと、私の耳に息がかかるくらいの距離で…また、さっきよりも小さい声で…。しかしはっきりと…


何故だろう。さっきまで何ともなかったのに…顔が…体が…


(熱いっ…)


心臓が激しく動いている…龍斗の鼓動と私の鼓動が一緒になった。

そして龍斗はこう聞いてきたのだ。








「俺のこと…好き?」




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