あなたに伝えたいこと
授業が終わると、悠樹がお礼を言って机を元に戻した。
「奈美」
それは、龍斗だった。
「何?龍斗のせいで、今気分悪いんだけど!」
「ごめんって。そんな怒んなよ。」
「いや、あんたのせいでしょ!?」
そう言い残し、教室を後にした。
×悠樹×
(奈美は明るくて、優しくて…きっと、モテるんだろうな。)
いつの間にか、奈美のことをいつも気にしていた。
そんなことを思いながら、教科書を開こうとした。だが、それらしいものが見当たらない。
仕方ない。先生に言いに行こう。隣の席が奈美で良かった。教科書を普通に見せてくれるだろう。前の席の時とかは、照れて見せてくれない子とか、一緒にみるのが嫌で、俺に貸してくれたり…とにかく、相手に悪いことをした。
いや、そう考えると、奈美にも悪いのか。
でも、奈美と机を付けて、近距離で授業ができるなら…ごめん奈美。こんな小さなことも俺には大きなことに感じてしまうよ。だから…
「教科書…貸してもらえる…?」
今まで普通に話してたのに、少しでも意識するとこんなに普通の言葉がでてこなくなる。
緊張して、たじたじになってしまった。
「いいよ」
やっぱり、奈美は優しい。
俺が机を合わせると、真ん中に開いて置いてくれた。
お礼を言って、ノートをとりはじめた。
机を付けると、距離が近くて余計に緊張してしまい、ノートをひたすら書いた。
しかも、さっきから奈美がこっちを見てきている気がしてしまう。
窓の外をみているのだろうか。
それとも…
そんなことはない。一か八かで、きいてみた。
「ん?どうした?」
「あっ、いや…なんでもない。」
だよな。でも、意識してしまっているせいか、奈美の頬が少し赤くなったようにみえてしまった。
そのとき、かわいいと思ってしまったんだ。
そんな気持ちをまぎらわせようと、奈美のノートをみた。
ウサギの落書きと、計算間違えに気付いてしまった。これだ。
「そっか。…あ、ここ間違ってるよ?」
「え、あ、マジっ!?」
あたふたしている。こんな近くで、そんなかわいいことされたら…
俺は、奈美に惚れてしまったのか。
でも、やはり、俺には遠い存在のようだ。
「だから、何っ!?」
「授業中にいちゃついてんのが悪いんだよ。」
こんなに仲のいい奴がいるんだもんな。
付き合ったりしてるのかな。
それでも俺は…
「負けない。」
小声で呟いた。