All I have to give
6001
私はただぼんやりとこの瞳に、田舎の何もない景色を映していた。
一定の速さで流れていく緑。
まだ、桜は蕾のまま。
きっとこの地で桜の開花を見ることはないだろう。
高校を卒業して、就職も決まっていた。
でも私は今日の為だけに生きてきた。
バイトで貯めたお金も…。
あの家に、私の居場所なんてない。
ぐっと唇を噛み締める。
.
< 1 / 87 >