All I have to give
浮かれていたが、当たり前のことだ。
ただで置いてもらおうなんて思っていない。
一体どんな条件が…?
生唾をぐっと飲み込んで、 彼の瞳を見つめた。
「この家の家事をすべてやること」
「家事…?」
それだけでいいのか…力仕事でも何でもやる覚悟だったのに拍子抜けしてしまう。
「ちょうど昨日まで雇っていた家政婦をクビにしたところだった。お前が代わりにやれ」
「どうして、クビに?」
灰皿らしきキレイな壺にタバコを投げ入れると、ジュッと火が消える音がした。
「あのババア、俺の時計を質屋に出しやがった」
「はあ…」
「この紙に詳細が書いてある。後で読んでおけ。部屋を案内する」
A4一枚の紙を渡され、彼は数ある部屋のひとつを案内してくれた。
クローゼット、ベッド、ドレッサー、シャワールーム…何でも揃っていて、まるでホテルの一室ようだ。
一人で使うには十分過ぎるほど広い。
「明日からでいい。今日はもう休め。あ、それと…」
思い出したようにズボンのポケットから出した一枚の黒いカード。
「必要なものは、コレで買え」
「いや、あたし…お金あるからだいじょう…」
「ガキの金なんてタカが知れてんだよ。いいから、持っとけ」
強制的に持たされた、クレジットカード。
この人の金銭感覚は理解できない。
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