All I have to give



「15、6のガキは…」


「ま、待って!あたし18だし」


「…そ。俺のことはハルでいい。明日8時に朝食が摂れるようにしておけ。俺の部屋には一切立ち入り禁止。他の奴は家に入れるな、以上」



パタンとドアが閉まった。


「私は…ユナ…」


って、自己紹介すら聞いてもらえず。

落ち着かない私は、ソファに腰を下ろして貰った紙に目を通した。


1.朝夜の食事を作ること。濃い味、洋食は避けること。トマトは嫌い。


なにこれ、トマト食べられないって…人のことガキって言えるの?


2.部屋の掃除。俺の部屋は不要。

3.洗濯は基本的にクリーニングに出し、着たいときに着れる状態に揃えておくこと。









31.俺のプライベート、その他俺に関する質問は一切受け付けない。詮索しないこと。


事細かに書かれた決まりごとに、少し憂鬱になる。

単なるワガママにも捉えられるけれど、ここに置いてもらえるなら容易いと思った。



結局ひとりでなんて生きていけない…


自分の不甲斐なさに、溜息がこぼれる。



"生まれてこなきゃ良かった"


紛れもない本心。


私は18年間、母に育てられてきた。


母は男と遊ぶ毎日。


家に帰ってくる時は決まって男にフラれた時。『あんたのせいよ』と怒鳴り散らしては私に手をあげた。


愛された記憶なんて、ない。


必要とされたことも…。


誰かを愛するなんて、愛されたことがない私には未知の世界だ。



.
< 11 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop