All I have to give
「15、6のガキは…」
「ま、待って!あたし18だし」
「…そ。俺のことはハルでいい。明日8時に朝食が摂れるようにしておけ。俺の部屋には一切立ち入り禁止。他の奴は家に入れるな、以上」
パタンとドアが閉まった。
「私は…ユナ…」
って、自己紹介すら聞いてもらえず。
落ち着かない私は、ソファに腰を下ろして貰った紙に目を通した。
1.朝夜の食事を作ること。濃い味、洋食は避けること。トマトは嫌い。
なにこれ、トマト食べられないって…人のことガキって言えるの?
2.部屋の掃除。俺の部屋は不要。
3.洗濯は基本的にクリーニングに出し、着たいときに着れる状態に揃えておくこと。
…
…
31.俺のプライベート、その他俺に関する質問は一切受け付けない。詮索しないこと。
事細かに書かれた決まりごとに、少し憂鬱になる。
単なるワガママにも捉えられるけれど、ここに置いてもらえるなら容易いと思った。
結局ひとりでなんて生きていけない…
自分の不甲斐なさに、溜息がこぼれる。
"生まれてこなきゃ良かった"
紛れもない本心。
私は18年間、母に育てられてきた。
母は男と遊ぶ毎日。
家に帰ってくる時は決まって男にフラれた時。『あんたのせいよ』と怒鳴り散らしては私に手をあげた。
愛された記憶なんて、ない。
必要とされたことも…。
誰かを愛するなんて、愛されたことがない私には未知の世界だ。
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