All I have to give
『あんたがいなければ、一緒になれたのに』
ねぇ、お母さん。
言われた通り、私出てった。
そしたら、しあわせになれるんでしょ?
私の存在が再婚の邪魔になるなんて、聞き飽きたよ。
だったら、生まなきゃよかったじゃない。
私なんて…。
「……っ」
目が覚めると、見慣れない天井…。
そうだ、私。ハルって人の家に…
携帯の時計には5時32分と表記されていた。
お母さんからは着信すら入っていない。
「あー…目腫れてる」
昨日泣いたせいで、瞼が重い。ガキって言われた自分の顔は、確かに童顔なのだけれど。
せめて大人っぽく見せる為に胸下まで伸ばしたブラウンの髪をひとつにまとめて。
そっとリビングへ向かう。
まだハルは寝ているだろう。
なるべく音を立てないように、キッチンに着いた。
実家の自分の部屋より広いキッチンに苦笑しながら、大きな冷蔵庫を開ける。
意外にも野菜やら食材がぎっしり入っていた。
そっか、この前までの家政婦さんが…
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