All I have to give
「……へぇ」
8時ぴったしにリビングに出てきたハルは、ピシッとストライプのスーツを着ていた。
ダイニングテーブルに並んだ食事を見て、彼は小さく頷く。
「材料が十分にあったから…」
「早く座れ」
「え?」
私は、家政婦なのに。
「いいから、飯。自分の持ってこいよ」
誰かと食卓を囲むなんて…
胸が詰まる思いで、ご飯を茶碗に盛る。
「ガキにしては旨いじゃん」
「本当…?」
「ん、クソババアより断然良い」
嬉しくて、唇が横にのびる。
「嬉しいときは、素直に笑え」
その時見せた、ハルが目を細めて少し柔らかく微笑んだ顔。
きっと、私は一生忘れないと思う。
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