All I have to give
せめてもの反抗で、軽く化粧をして真新しいワンピースに袖を通す。
玄関にはご丁寧に、ワンピースと同じブランドで揃えたヒールが置いてあった。
コレを履けって事ね…
「高っ…」
履きつけないヒールに足をカクカクさせながら、預かったスペアキーで施錠して、なるべく急いでエントランスへ向かう。
タイムリミットの5分は当に過ぎているのは知っている。
でも、いきなり叩き起こされて5分で準備しろなんて無茶苦茶だ。
「…げ」
ピッタリと横付けされた高級外車。
左側の窓からこちらを睨み付けるハルは、明らかにご立腹。
「遅えよ。14分かかってんぞ」
「だって!!」
「いいから早く乗りやがれ」
出かけるなんて一言も聞いてない。
「あー、お前遅刻した挙げ句に俺を運転士にしやがる気か?」
「はいい?」
当たり前のように後頭部座席のドアを開けたら、運転席から怒鳴られ…
「助手席」
慌てて助手席に乗り込んだ。
初めてここに連れてこられた時は後ろに乗ったじゃんか…なんて、言ったって通用しないから言わないけれど。
ブオォォオオン…
そしていかにあの秘書が、安全運転だったかを今気が付いた。
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