All I have to give
「自己中…」
聞こえないように小さな声で悪態をつきながら、彼の背中を追う。
どうせ、どこだかの高級ホテルのランチなんだろうな…
そう思っていた私は、そのまま更に階段を下りていく事に違和感を覚えた。
「何ここ、バー?」
「夜は、な」
ネオンに縁取られた看板には『Black White』と意味の分からない名前がカッコよくチカチカしている。
重たい扉の向こうは、ガランとしたバーが広がっていた。
「おー、ハルト」
「よ、ランチ食い来た」
カウンターから声をかけたのは、髭を生やしたワイルドなおじさん。
ハルってハルトって名前なんだ…
私と目が合い、おじさんは不思議そうにハルを見た。
「この子は?」
「あぁ、ユナ」
「…どうも」
一瞬、よく分からない緊張が襲った。
私とハルの関係。
けれど、ハルはそれ以上を言わない。
「若くて可愛いねー。さ座って座って」
私とハルは一番奥のコーナー席へと案内された。
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