All I have to give
何だろう…。ヒヨリって人がすごく気になる。
どんな人で、ハルとどんな関係なのか…
「美味しかった!お腹いっぱい」
こんなに美味しいハンバーグを食べたのは初めてだ。お腹を擦りながら、オレンジジュースを口に含む。
「じゃあマスター、またな」
「おう。ユナちゃんもまた来てね」
「ご馳走さまでした」
今度来た時にはビーフシチューにしよう。
そんな楽しみを胸に、バーを後にした。
地下駐車場に、ヒールの慣れない音が響く。
女の子は皆こんなに高いヒールを難なく履きこなしているなんて…
「ひゃっ」
「………っ」
まさかとは予想していたけれど。
突然足を挫いて、前のめりになった私はハルの背中に抱き着く形で転ばずに済んだ。
「…ごめん」
「………」
あれ?思いっきり怒鳴られると思っていたのに。ハルは無言のまま私をじっと見つめた。
「……ハル?」
瞳をそらせない。吸い込まれそうになる感覚。
やっぱり、文句のつけようのないくらいキレイな…
「お前はさ…何も欲しくないの?」
「え…?」
意味が、分からない。
ほんの一瞬触れた背中の感触が、不意に蘇る。
見た目よりも広くて、温かかった…
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