All I have to give



「欲しくないの?」


「意味が分からないんだけど…」



冷たいと言うよりは、切ないと言った方がしっくりとくるハルの視線。


どうかしちゃったの?


「いや、何でもない。お前は、何か…変わってる」



「へ?」



ハルはくるっと背を向けて、ポケットからキーを取り出してスマートに車のロックを解錠する。

唖然とする私を放って、さっさと車に乗り込んだ。


か、変わってるなんて言われて気にならない方がおかしい。

ハルは何が言いたいの?



足を引きずりながら渋々車のドアを開ける。



「…欲しいものなんて、たくさんあるよ」



ハルがチラッと私を見た。


「…じゃあ、何故カードを使わない?」


確かに、ハルから預かったクレジットカードは一回も使っていない。

物欲がないわけじゃない。


ただ…


「あたしが欲しいものは、お金やカードで買えるものじゃないから…」



「…そ」


ハルは静かに車を走らせた。

何か、煮えきらない。

ハルが私に興味がないから?


そんなんじゃなくて…もっと根本的な何か…



結局休みをくれると言われたのに、ハルのマンションに着いた頃には夕方だった。

休みだからって特に用事も何もないのだけれど…


映画でも見たかったな…と少し残念な気持ち。


「付き合わせて悪かった」


「…え」


ハルが謝るなんて、本当にどうかしちゃったのか。


「足、平気なんか?」


ほら、やっぱり変だ…



そしたら、私まで動揺して鼓動が速くなっていくって…

ハルは知ってる?


「バーカ。イイオンナは足を傷だらけにしねぇんだよ、ガキ」


あらゆるところにマメができて赤くなった私の足を見て、ハルは自分の部屋へと帰っていった。



「…イイオンナなんか、別に」



リビングに残されて、ポツリと呟く。


なのに…


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