All I have to give
「いやぁ、悪いね~突然」
ハルに続いてリビングに入ってきた男の人。
バッチリ目が合って、その人のヘラヘラした笑顔が固まった。
「え、何?ハルト、女できたの?」
「ユナ、コーヒー」
「う、うん!」
ハルの低い声は、雷よりも怖いと思う。
私はキッチンに逃げるようにして入り、お湯を沸かし始めた。
「しかもめちゃくちゃ若くない?どういうこと?」
「お前うるさい」
「えー、いいじゃん。教えてくれたって!俺とハルトの仲じゃん」
そんなやりとりが聞こえる。
ハルが黒だったら、きっとこの人は白だ。今日行ったバーの名前『Black White』みたいな。
彼の人懐っこい笑顔に、そんな事を思った。
ハルの笑った顔なんて見たことないもん…
「はじめまして俺カズ。ハルトとは幼なじみなんだ。よろしくね」
カウンター越しにカズさんがニッコリと私に笑顔を向けた。
「はじめまして…ユナです」
「ユナちゃん、ね。ねぇ、俺コーヒーは砂糖たくさん入れて欲しいな」
「分かりました」
小動物みたいなくりくりとした大きい瞳が、透き通ったビー玉のように綺麗…。
くしゃっと惜しみなく笑顔を見せるカズさんは、ハルと同じ歳には見えないくらい可愛い雰囲気がある。
年齢を知らない私は、勝手に20代後半だと思っている。
「ハルトと、どんな関係なの?」
「えっ?」
コーヒーの香ばしい香りが立ち込める中、カズさんが小さな声で私に聞いた。
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