All I have to give
はっと目が覚めると、肩からブランケットが床に落ちた。
あれ?
ハルがかけてくれたのだろうか…
こめかみに滲んだ汗をそっと指で拭う。
いつも、私が見る夢は過去の記憶。
思い出したくない…記憶。
ブランケットを身体に巻いて、部屋を出た。
そう言えば、今何時だろう…?
廊下を抜けて、リビングのドアから光が漏れているのを確認する。
カズさんて、もう帰ったのかな…。
「あ、やっと起きた。夕飯どうするか確認しに行ったらお前ソファで寝てるから」
「はい、これ。ありがと…」
ブランドのロゴが入ったふわふわのブランケットを、ハルに渡した。
カズさんの姿はもうない。
「それ、食うか?」
いつもピカピカに磨いているローテーブルの上には、食べ散らかした残骸が広がっている。
ワイングラスやボトルもそのまま転がっていて、これを片付けるのかと思うと一気に憂鬱な気持ちになった。
「食うかって…何も残ってないじゃない」
「バーカ。冷蔵庫ん中入ってる」
とりあえずローテーブルの上のワイングラスを二つ手に取ってキッチンへと向かう。水に浸けておかないとワインは落ちない…。
冷蔵庫の中には、お寿司の握りの詰め合わせが入っていて思わず笑みがこぼれた。
「時間経っちゃってるけど、絶対旨いから」
「うん!」
.