All I have to give
人が四方八方で行き交う。
キャリーバッグを引いて、初めての都会に右も左も分からない私は、そんな人々の行く手を邪魔していた。
どうにかなると思った。
都会に出れば、働く場所も寝泊まりするところも見つかると…
知り合いに会って連れ戻される心配だってない。
18になったばかりの私には、そんな甘い考えが精一杯だった。
出口が分からずに彷徨い歩いていると、様々なビルが建ち並ぶロータリーへと出た。
初めて見る、人の数、ビル、喧騒、車の列…
テレビで見た時よりもどこか寂しくて、殺伐としていると思いながら適当に歩き出す。
「あ…」
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