All I have to give
その日も、ハルの帰りは日付が変わった後だった。
「おかえり」
ネクタイとジャケットを受け取る。
「なんだ…先寝てたっていいのに」
ハルは静かに言いながらタバコに火を点けて、ソファに腰を下ろす。
会いたくて勝手に待っていたのは、私なのに。
鼻の奥がつんと痛くなる。切なさのような何とも言えない感情が、ぐっと込み上げてきた。
日和さんの事…考えてるのかな。
「…どうした?やっぱり体調悪いんか?」
「えっ…ううん。大丈夫。ご飯、温めるね」
ハルと視線を合わせることが出来ないまま、キッチンへと向かった。
同じ空間に、一緒にいるのに…
余計に孤独を感じてしまう。
違う。家を出てきてずっと孤独だった私は、ハルと一緒にいることに慣れてしまったんだ。
ハルがいたから、寂しいなんて感情暫く忘れていた。
元々私はずっと孤独だったじゃないか…。
「あっ…」
ボーッと考え事をしていたせいで、煮物が焦げてしまった。
「ハル…ごめん。焦がしちゃった」
「そか…。いや、いい。悪かったな…もう休め」
「うん…」
泣きたくなるほどに、胸が締め付けられる。
今まで、こんな思い数えきれないくらいあったはずなのに。
味わったことがないくらい、苦しい…。
それは、ハルだから?
ハルの、せい…?
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