All I have to give
ひと夏の思い出
やっと梅雨が明けて、夏が来た。
今日は朝から蒸し暑く、目覚ましが鳴るよりも早く目が覚めた。
「あっつ…」
カーテンを開けて、眩しい太陽に瞳を細める。
毎日はあっという間だ。
ハルと私はすれ違いの生活が続き、最近はまともに会話していない気がする。
余計な事を考えないように、私が壁を作っているせいもあるだろう。
「ふぅ…」
髪も伸びてきたなぁ…。いっそのことバッサリ切ってしまいたいけれど、もっと幼く見られてしまう。少し垂れた黒目がちな目元、丸い輪郭。
鏡の前で髪をポニーテールに結びながら、ふてぶてしい自分の顔を少し恨んだ。
料理は幼い頃から自分で作っていた事もあり、かなり腕も上達してきた。
自分で食べる料理と、人に食べさせる料理では手抜きも出来ないし気を遣うけれど楽しい。
私はいつも通り手際よく準備をしていく。
8時になり、ハルが起きてくる頃。
いつも私は緊張して、時計をじっと見つめてしまう。
「お、おはよ」
ハルは険しい表情を浮かべてリビングへ入ってきた。
きっと、暑いことに苛立ってるのだろう…
まだ3ヶ月ちょっとだが、一緒に住み始めて分かった。
ハルの機嫌は表情にすぐ出る。
「結愛…」
胸がドクン…と鳴った。
初めて、自分を呼ばれた気がして。
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