All I have to give



必要なものって、何だろう。


私はハルのスーツをクリーニングに出しにきたついでに、デパートへと入った。



どのショーウィンドーにも、華やかな可愛い洋服を着たマネキンが立っていて。


見ているだけでも胸が弾む。



そうだ、ハルの隣にいても見劣りしないような大人っぽい洋服を買おう…。


ハルが言う『イイオンナ』に近付けるように。


ふと、以前逢ったあの綺麗な女の人を思い出した。



「あれ…この人」


立ち寄ったショップに置かれていた雑誌をパラパラと捲っていた私は、あるページで手を止める。


"瑠美の着まわし30日"という特集に出ているモデルが、この前逢った人にそっくりで。


「お姉さんも瑠美ちゃんのファンですか?綺麗ですよねぇ。この服、同じものなんですよ~」


店員さんが笑顔で話しかけてきた。



肩の大きく開いた、花柄のワンピース。


「そ、そうですね…」


「ぜひ、鏡の前でどうぞ?」


私に似合うわけないじゃんか!


とは、言えず…渋々服を当ててみる。


「すっごく大人っぽくて、似合いますね」


そうして、結局断ることが出来ないまま、購入して店を出た。


「ありがとうございましたぁ~」


絶対着ないんだから…!!

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