All I have to give
いつかは、その時が来る。
私が、ハルの側を離れる時が…
例え今、私が『ハルのもの』だったとしても。
それは儚くて、砂のようにさらさらと消えていくものなんだ。
だけど、それでも今は。
今だけは、"現実逃避"だから。いいよね?
「わぁー!海だー!」
私はサンダルを脱いで、砂浜を走った。
「転ぶなよー?」
ハルの声がもう遠くに聞こえる。
ハルの別荘のすぐ近くのビーチには、人が誰もいなくて。
綺麗な青い海を独り占めしているみたい。
砂はさらさらで熱いけれど、波打ち際まで来ると海水が気持ちいい。
バシャバシャと足で水を蹴りあげてはしゃぐ。
「キャッ…波がっ、あはは」
ワンピースの裾が少し濡れても、全く気にならなかった。
「おい、何一人で楽しんでんだよ」
「ハルも入りなよ」
「バーカ。俺はガキじゃねんだよ」
そう言うハルに海水をかける。
「お前!ふざけんなよっ!」
「ひゃっ」
ハルがムキになって反撃してきた。
思いっきりガキじゃんかっ!
バシャッ…
ハルに腕を掴まれて、二人して海に身体を持っていかれて。
「プッ…もう!」
「お前のせいで、泥まみれだ」
ハルの真っ白なシャツが、砂と水で汚れてしまった。
そのまま、ぐっと肩を引寄せられて。
ハルの胸に抱き締められる。
「ハル…?」
心臓が、壊れてしまいそうなくらい。
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