All I have to give
でも、捨てることなんて出来ない。
ハルは何も捨てられない。
ずっとハルのままでいられないんだ…。
次期代表取締役 橘 悠斗なんだって、カズさんが言っていた事を思い出す。
「ユナ、ベッドまではこ…」
「ハルっ?!」
カクッと項垂れたと思ったら、ハルはそのままテーブルに突っ伏した。
酒臭っ!!
飲みすぎたのか、そのまま眠ってしまったハルの腕を掴んでみるけれど、ベッドに運ぶなんて…
「無理だって!」
「……ゆ、な」
「意識あるなら立ってよ?」
ふらふらのハルを支えて、ベッドまで歩く。
「重…」
途中、壁にぶつかったりなんだりしたけれど、やっと寝室のベッドまで辿り着いた。
「わっ…」
ハルがベッドに倒れこむと、私まで一緒に巻き込まれて。
うつ伏せに寝るハルと、仰向けに倒れた私。
ハルの左腕が私の肩を掴んでいて、起き上がれない状態だ。
寝息を立てて伏せられたハルの瞳を見つめて、鼓動が速くなる。
完全に私の貧相な胸が、ハルの腕に潰されているんですけど。
私は諦めて一緒に眠ることにした。
「おやすみ、ハル…」
今まで誰かと寝たことなんてない私は、幸せを噛み締めながらそっと眠りについた。
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