All I have to give
「ちょっと、ガキって…」
怒りを含んだ低い声よりも、"ガキ"という言葉にカチンときた。
邪魔って…――――
「………っ」
立ち上がって初めて見た声の人物に、息を飲む。
すらりと背が高く、高級そうなスーツに身を包んだその男は、冷たい瞳で私を見下していた。
秘書らしきもう一人の男性が、気まずそうな顔で俯き、彼に傘をさしている。
傘くらい、自分でさせっつーの…
「車、まわしてこい」
「はい」
秘書から傘を取り、顎で人を使う様に呆れてしまう。
「どう見てもガキだろ。おい、何してる」
「何してるって…雨が降ってきたから…」
雑誌やテレビで見る芸能人よりも遥かに整った容姿。
そんな人を目の前にしたら、急に緊張が張りつめてきた。
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