All I have to give



「いつも心に居るんだよ、あいつが…」


日和さんの事なんだって、すぐに気付いた。


私はただ黙って、ハルの言葉に耳を傾ける。



「朝起きても、何をしていても…寝る時もいつも。あいつの事が忘れられなかった。けど、この一週間は…違った」


ハルと目が合って、金縛りにあったように縛られた。視線を、外せない。


「単純に、楽しかった。ユナとここに来て。バカみたいに、楽しかった…」


涙が溢れた。


例え、短い間だったとしても。ハルは日和さんの事を忘れられたことが、嬉しくて…


「お前は、"イイオンナ"だ。自信持て」


「フッ…ヒールも履けないのに?」


「んなの、慣れだ慣れ!」


もっと、繋ぎ止めて欲しいのに。

いつもの横暴さで、離れないように。


抱き締めて、言って欲しいよ…


「ハル…抱いて」


ハルだけを、考えていたい。


.
< 52 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop