All I have to give
「素材が良いからよ」
「お前、照れすぎ」
「だって…」
ふわっと、ハルの匂いが鼻に届いた。
肩を抱かれて、ますます顔が熱くなる。
「ありがとな、カッちゃん」
「いいわよ。楽しんできてね」
勝野さんにペコッと頭を下げて、ハルと一緒に車に乗り込んだ。
運転席にはハルの秘書がハンドルを握って待っていた。
「大丈夫かよ、そんな緊張して」
「こんなの、初めてだし…」
ハルの隣にいて、いいのだろうか…
そう思って膝の上に置いた手をギュッと握りしめた時。
「お前は、世界で一番イイオンナだ」
私の手を、ハルの大きな手が包み込んだ。
温かくて、心のモヤモヤがすっと晴れていく。
「笑ってろ」
ハルの魔法で、変われそうな気がした。
「到着しました」
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