All I have to give
「はぁー…これやるから、どっか行け」
「は…?」
黒くて大きな傘を私に向ける。
「ほら、早くしろ…」
「ど、どっか行けって言われても…行く場所も働く場所もない!どこに行っても皆邪魔邪魔って…!!」
あぁもう…。ムキになって感情が一気に溢れ出した。
涙を堪えきれず、視界がぼやけて頬を伝う。
「あたしなん、か…」
生まれてこなきゃ良かった。
「お、おい…泣くなよ。くそガキ」
本気で悲鳴を上げて泣き出す私に、そんな慌てた声が聞こえるはずもなく…
いつの間に車が横付けされていた。
「~っ…お前も乗れ」
「……え」
恐らく私の声は聞こえていない。そのくらい小さくて掠れた声しか、出なかったんだ…。
「行くとこねぇんだろ?乗れよ」
キャリーバッグをトランクに放りこまれて、私はそのまま後頭部座席に乗った。
東京に出て初めて言葉を交わした見知らぬ男についていくなんて。
私、どうかしてる?
けれど、少しも怖いと思わなかった…―ー
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