All I have to give
ドアを閉めた瞬間から、思いっきり泣いた。
泣いて泣いて、泣き疲れて…ふっと笑いが込み上げる。
どこに行くって言うんだ…
住む場所も働く場所も、探さなくちゃいけない。
「また、独りか…」
ハルにどれだけ助けられたか。
勢いだけで東京へ逃げてきた私に、居場所を与えてくれて。何不自由なく、ここまで生きてこれた。
人を好きになる気持ちも知った。
ドキドキも温かさも苦しさも、全部。
ハルが教えてくれた。
離れたくなんかないのに。
愛されたいだなんて求めないから、ただ変わらずにずっと…隣にいれたら
それでよかったのに…。
いつからこんなに欲張りになってしまったのか。
『そっか…』と言ったハルの声を思い出す。
"イイオンナ"と言われて、自惚れていたのかもしれない。
『出ていくなんて、俺が許さねぇ』
なんて言葉を、どこかで期待していた。
やっぱり、ハルにとって私はただの…
「寂しさを、埋めるためだけの…存在」
私にとっても、そうなるはずだった。
お互いに寂しさを持ち寄って、忘れるための。
愛なんて知らない私に、愛される術もない。
愛し方も分からない。
けれど、込み上げるこの感情をもしも愛と呼ぶならば。
私はハルが愛しくて仕方ないんだと今更ながら感じている。
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