All I have to give
決意
「はあぁ…」
色々な不動産を転々とし、歩き疲れた私は公園のベンチへ腰を下ろした。
ダメだ。未成年の私には、一人で生きていくことなんて出来ないんだ…。
絶望的な気持ちで、空を仰いだ。
木と木の間から見える空は、晴れ渡った水色。
「どうも」
「………」
隣に突然、男の人が座って私に笑顔を向けた。
私よりも少し年上だろうか。短い黒髪と、日に焼けた肌。外見はチャラチャラしたようには見えなかったが、ナンパだろうと無視をすることにした。
「あ、突然ごめん。ナンパとか、変な勧誘じゃなくて…その…」
彼は困ったように瞳を泳がせて、手に持っていたペットボトルのスポーツドリンクを膝に挟む。
「そこに、タオル無かった?」
「え…?」
私が座ろうとした時は、何も無かった。ナンパではないのだと思い、ベンチの辺りをキョロキョロすると…
「あ…」
白いタオルが土の上に落ちていた。
慌てて拾って彼に渡す。
「落ちちゃったのか…ありがとう」
「あたしこそ、すみません…」
「いや、いいんだ。俺がちゃんと置かなかったから」
タオルについた砂を簡単に払い、彼はそれを首に巻いてニコッと笑った。
悪い人ではなさそうで、ほっと胸を撫で下ろす。
「まさか女の子が座ってると思わなくて、俺も変な声のかけ方になっちゃったしね」
確かに、突然『どうも』なんて言われたらナンパと間違えるに決まってる。
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