All I have to give
慌てて立ち上がった彼は、膝の間に挟んでいたペットボトルの存在を忘れていたのか。
コロコロと勢いよく転がっていくペットボトルを追いかけていく。
その姿がなんだか可愛くて、私はまた笑いを堪えきれずに噴き出した。
「本当…ダサいな」
彼は顔を真っ赤に染めて、ふいっと視線をそらした。
「また来ます」
「うん、また」
ここに来ればまた会える。不思議とそんな気がして。
名前さえ知らない彼に背を向けた。
買い物を済ませて、ハルの部屋の前でバッグからカードキーを取り出す。
『ここを、お前の帰る場所にすればいい』
こんな時に限って、ハルの声が頭の中で響いた。
「…帰る、場所…」
ハル…、これからどこに帰ればいい?
私の居場所はどこにもないのかな。
「ハル…」
ハルがいない部屋に入って、そのままベッドに突っ伏した。
どうしようもなく、会いたい。
触れたい。
嘘でもいいから、求めてほしい。
難しいことなんて、全部忘れて。
でもね。
やっぱり、愛されたい。
ハルを愛していたいよ…
.