All I have to give
どのくらい寝ていたのだろう。
ハルが帰ってきた音で、はっと意識を取り戻した私は、枕元の時計を確認した。
「1時…」
それと同時に、コンコンと控えめにドアをノックされて一気に鼓動が速くなる。
「は、はい…?」
「入るぞ」
ドアが開いて、スーツを着崩したハルが入ってきた。
「どうした、の?」
ハルは何も言わずにベッドサイドに腰を下ろして、私を抱き締めた。
ハルの温もりが全身に広がって、背中にそっと腕をまわすけれど。
「ハ、ル…?」
「…ごめん」
ハルの絞り出したかのような弱い声に、胸がきゅうっと狭くなる。
何で謝るの?
「ごめん…」
そう言って腕に力をこめるハルに、ただこみ上げてくるのは涙と切なさで。
「…謝らないでよ」
そう伝えるのがやっとだった。
ハルに言いたいこと、たくさんあるのに。
この気持ちを否定されるのが恐くて。
飲み込んでしまう。
「俺、日和と婚約した」
.