All I have to give
そのまま静かに走り出してから、もうどのくらい経っただろう。
雨に濡れたアスファルトの上をタイヤが擦れる音が、やけに耳に響く。
隣にはあの男が座っているけれど、思いきり泣いたせいで気まずくて。
私は窓の外をじっと眺めていた。
日も傾き始めて、街の電飾が目立ってきて。
高層ビルの群れに、瞳を奪われる。
本当に私は…
「明日のご予定ですが…」
ずっと沈黙だった車内で、運転をしている秘書が控えめに口を開いた。
「あー…午後からに変更しとけ」
「かしこまりました。その様に」
一体何者なんだろう…。
乗っている車は、田舎者の私でさえ知っている高級外車。
「お疲れ様でした」
車が止まり、ドアが開けられた。
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