All I have to give
全部、全部彼に捧げたいと思った。
私が持ってるもの、全てを…。
「…ただいま」
もう二度と帰ってくるものかと思っていたのに。
私の本当に帰る場所は、ここでしかないのかもしれない。
結局、私には羽ばたける羽なんてないのだから。
「結愛?」
ハルが、教えてくれたんだもの。
どんな親であっても、私のお母さんはこの人だけなのだと。
「…お母さん」
少し痩せた?
「家出はもう終わったの?」
そう言って呆れたように笑うお母さんに、鼻の奥がツンと痛くなる。
帰ってくるって、確信があった?
「ごめんな、さ…」
そう言い終わる前に、抱き締められて。
心の奥で固まっていた何かが溶けていくような感覚がした。
「おかえり」
視界が涙で歪む。
一度だって、こんなことされた記憶なんてないと思っていたのに。
背中をトントンと優しく叩いて、細い身体で抱き締めてくれるこの温もりが、懐かしく感じる。
お母さん、私好きな人ができたんだよ。
でもね、叶わなかった。
ほら、初恋は実らないってよく言うでしょう?
苦しくて苦しくて、もう恋なんてしなくたっていいや。
時間が経てば、忘れられるかな…?
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