All I have to give



テレビ画面に映しだされたのはニュース番組。


興味のない政治の内容だった。


この時間の番組はどれも似たりよったり…



「…次はこちらの話題です。橘ホールディングスの…」




吸い込まれるようにテレビに近付いた。
ハルが映るかもしれないと思うと、一気に鼓動が速くなる。


「ハル…」


左端に今週末結婚!という文字。


スーツを着た柔らかな笑顔を浮かべるハルの隣には、日和さんが寄り添う。


見なきゃ、よかった。



だって、こんなに苦しい。


「バカ…みたい」



もう、これ以上苦しいのは耐えられないよ。


どうして想いは簡単に消すことができないの?



未だ胸の奥で疼く気持ちは、窓から覗く真っ赤な夕日と同じようで。


そのまま真っ暗な闇になって、見えなくなってしまう。


「ハル…ト」



想いが届くことも、もう二度と会うこともない。



横になって瞳を閉じれば、ハルの部屋から見えた東京の夜景が浮かぶ。


ここからじゃ決して見ることの出来ない景色。



束の間の幸せの後に来る反動は、思っていたよりもずっと辛くて切ないんだね…。




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