All I have to give
All I have to give
翌日、お母さんが仕事を休んで迎えに来てくれて退院した。
「仕事休んでまで来なくても、一人で帰れたのに」
「何よ、素直じゃないんだから」
嬉しいけれど、擽ったい。
日傘を差したお母さんは瞳を細めて笑った。
「ねぇ、結愛」
「何?」
何かを企んでいるような声色に、怪訝に返す私。
「ちょっと、寄り道しようか」
「え?どこに?」
お母さんはニヤニヤしてそれ以上教えてくれなくて。
私はひとりモヤモヤしたまま、線路沿いの何もない緑の中を歩いて行く。
生まれ育ったこの場所は、何一つ変わらない。
“なんっもねぇけど、良い所だな”
ハルが夢の中でそう言ってくれたから、好きになれそうだよ。
嫌いだったのに、やっぱり落ち着くの。
お母さんは浜辺の方に向かっているようだ。
「じゃあ、先に家に帰るから」
「え?待ってどういう意…」
視線の先に。
息が止まりそう。
「…ハ、ル?」
.