All I have to give
日和と出逢ったのは、高校三年生の時だった。
どうせどこだかの令嬢と婚約させられることは、子供の頃から嫌ってほど聞かせられていたから。
初めて日和を紹介された時も、大して動じないつもりだった。
けれど、日和は感情を失くした人形のように澄んだ瞳で真っ直ぐ俺を見据えていて。
今にも消えてしまいそうな程儚げな表情で、冷たく笑ったんだ。
「笠原 日和と申します」
その小さな手を取って、何故か俺が守ってやらなきゃと感じていた。
本当は、温かく笑うんだろ?
陽だまりのように…
俺が大学院を卒業したら、結婚する約束で。日和との交際が始まった。
俺は少しずつ心を開いてくれる日和にどんどん惹かれて。
けれど、日和はそうじゃなかった。
大学院を卒業する時、突然日和は姿を消した。
駆け落ちだって、分かっていた。
でも俺は、日和が必ず帰ってくると確信していたんだ。
俺に見せたあの笑顔は、嘘じゃないって…
信じていたかった。
「日和ちゃんは、捨てきれなかったんだよ…」
和也が何を言いたいのか分かっている。俺だって同じだと。
結婚式が明後日に迫った時。
日和は俺に言った。
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