All I have to give
「悠斗、行っちゃったね」
“Black white”で、亜美が空になったグラスをカウンターに置いた。
いつも賑わっている店内だが、月曜日の夜だからか客はまばらで。今夜はしんみりとした雰囲気が漂う。
「俺ら、幼稚園からずっと一緒だったもんな」
「そうだよね。もう頻繁に会えなくなっちゃうね」
亜美の初恋の相手は、俺じゃなく悠斗だ。
寂しそうな横顔に、少しだけ嫉妬が渦巻く。
「俺がいるじゃん」
「何?ヤキモチ?もう、あたしが悠斗を好きだったなんていつの話よ」
亜美が呆れたように笑って、俺の手を握った。
俺だって寂しいんだよ。
まさか悠斗が結愛ちゃんを追って行くなんて思っていなかったから。
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