紅桜の散る頃に。
少し射し込んだ光に目をやるとそこには息を切らしたかなくんがいた。

「なに...やってるんだよ...」

「え?」

かなくんの怒りを押さえつけるような震えた声にハッと抱き締められていることに気が付く。

慌てて離れようとしたけど何故かさっきよりも抱き締める力が強くなった。

「ちょ、蛍...?」

蛍に疑問の視線を投げ掛けて見るけどそれを無視して話し出す。

「なにって、見てわかんねぇ?」

口角を上げて笑う蛍。

「ふざっ...けんな!!」

かなくんは今にも蛍に殴りかかりそうな勢いで怒鳴った。

「ふざけてんのは、どっちだよ。幼馴染みかなんだかしらねぇけど、お前なんかに水穂渡せるかよ」

え...?い、今なんて...

「分かったんならさっさと消えてくんねぇ?邪魔なんだけど」

「さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって、お前こそ邪魔なんだよ!」

っ...!

かなくんの怒鳴り声に思わずビクッっと肩を震わす。

こわい、こんなかなくんは知らない。
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