紅桜の散る頃に。
「水穂...お前は俺が守るから」

私が怯えている事に気がついたのか優しく言ってくれた。

「あー。もうやめようぜ、水穂が怯えてる。」

まるで見せつける様に蛍が私の腰を抱いて歩き出す。

「てめぇっ...!!」

すると突然かなくんが蛍の胸ぐらを掴んだ。

そのまま蛍を壁に押し付けた。

ドンッと大きな音と共に蛍の顔が歪む。

「蛍っ...!!」

「水穂、こなくていい。先教室戻ってろ。」

止めに入ろうとするのを蛍が止める。

「でもっ!」

「俺、水穂に殴り合って喧嘩してるトコなんて見られたくねぇ。かっこわりぃ...」

なんでこんな時にまでカッコつけ様とするのよ!

そう言おうとしたけど蛍の目がいつもと違うのに気がついた。

かなくんと蛍はお互いに睨み合って今にも殴りかかりそうな目をしていた。

でも蛍が言うように私がいるから殴りたい衝動を押さえている。

なら、尚更私がいなくちゃなんないじゃん!私だって蛍とかなくんがケガするのなんて見たくないよ...

「水穂、頼むから」

「私が今出ていったら二人ともケガするじゃん!」

そう言うと蛍は困ったような表情をした。

少し考えて蛍は口を開いた。

「なるべくケガしねーようにするからよ。教室戻っとけ。な?」

ダメだ、コイツ何を言っても引かないみたい。

そう思った私はかなくんに目を移す。

「みっちゃん、大丈夫だから。」

かなくんも同じ意見のようだ。
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