Secret
そんな私を一瞥した乾 諒は

「……別に」

何の感情も感じられない声音で答えると

またその視線を窓の外に戻す。

その態度に――

……なに、こいつ!?

私はイラっとした。

人が折角気を遣って話し掛けてあげたのに……。

私がいうのはどうかと思うけど、こいつのコミュニケーション能力も最悪だ。

文句の1つでも言いたいところだけど、今まで必死に隠し通している私の本性を曝け出す訳にはいかない。

小さく深呼吸をして、込み上げてくる苛立ちを押し殺した私は頑張って笑顔を浮かべる。

頬の辺りがピクピクと痙攣しているのが分かるけど、乾 諒は窓の外を眺めているから問題はない。

「そ……そっか。何か困ったことがあったら遠慮なく言ってね」

社交辞令でしかない言葉を残し彼の席から離れる。

そんな私に乾 諒は何かを言うでもなくただ窓の外を眺めているだけ。

自分の席に着き、私が思うことは

……あいつにはもう絶対自分から声を掛けたりしない!!

それだけだった。



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