Secret
『俺が知らねぇーとでも思ってんのか?』

「……」

……失敗した。

朝緋が私の行動で知らないことなんてないんだ。

驚いたりした私が馬鹿だった。

放課後の寄り道。

「べ……別に、ちょっとおやつを食べに行っただけじゃん」

言い逃れを謀る。

……北山先輩が食べたハンバーガーの量は決しておやつって言えるレベルじゃなかったけど……。

朝緋に寄り道と言われて思い浮かぶのは、北山先輩にほぼ強制的に付き合わされたあの時のことだった。

現にあの日、あいつはこのマンションの前にいたんだし。

逆にあの時のことを朝緋が把握していない方がおかしい。

その他にも、乃愛と放課後に寄り道したこともあるけど、女友達との寄り道に朝緋が嫌味を言ったりすることはない。

『深夜に出歩いてる訳じゃねぇーから別にいいけど」

「……」

……なら、そんな話持ち出さないでよ。

そう、思いつつもそれを指摘すれば話が長くなるのが分かっている私は、敢えてその言葉を喉の奥に閉じ込めた。

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