Secret
「姫花、ごちそうさま」

唐揚げ1個に対して律儀に両手を合わせる瑛太に苦笑しつつも

「お粗末さまでした」

私もぺこりと頭を下げる。

瑛太は私の頭をクシャリと撫でると

「じゃ~な」

仲の良い男子が屯っている席へと戻っていった。



微妙に乱れた髪を手櫛で直していると

「なんで姫花は怒らないの?」

乃愛に尋ねられた。

「怒らない? なんで怒るの?」

「青木にお弁当盗られたじゃん」

「盗られたって、大袈裟じゃない? 瑛太はつまんだだけでしょ」

大袈裟な乃愛に私は思わず笑みを溢した。

「……」

「それに美味しいって言ってもらえて嬉しかったし」

「姫花って……」

「……?」

「おおらかっていうか、寛大っていうか……怒ったり、イライラしたりとかしないの?」

「なに言ってるの? 私だって人間なんだから怒りもするしイライラもするよ」

「そうだよね。怒ったり、イライラしたりしない人なんかいないよね」

「多分ね」

笑いながら頷いた瞬間、私は背中に鋭い視線を感じた。

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