Secret
まるでタクシーのようにサービスの行き届いた朝緋の家の車。

タクシーと違うのは、ドアの開閉が自動じゃなくて手動だってことと、行き先を告げる必要がないことと、料金が要らないこと。

隣に座った朝緋は、ドアを開閉してくれた運転手さんにお礼を言うこともなく、皮張りの座り心地の良いシートに身を沈め、偉そうに踏ん反り返っている。

パパとママの前ではとてつもなく礼儀正しかったのに……。

そのふてぶてしい態度に心の中で悪態を吐く。

私がそれを口に出さないのは、朝緋はこんな態度でも許される人だから。

静かに動きだした車の窓から私は遠ざかっていく実家を眺めていた。



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