Secret
私は咄嗟に背後を振り返る。

漆黒の髪。

黒縁のメガネ。

その眼鏡に掛かる長い前髪。

整髪料なんてつけていないかのような洗いざらしのような髪はすこしクセがあるみたいで緩くうねっている。

第一ボタンまできっちり留め、ネクタイもピシッと閉められ、着崩すことなくきっちりと着られている制服からは、彼の几帳面な性格が窺い知れる。

顔の正面はこちらを見ているけど、眼鏡と長い前髪の所為でその視線に何を捉えているのか判断することができない。

細く弱々しい印象を受ける彼は一番後ろの窓際の席に１人で座っていた。

彼の机の上に置いてあるのはブラックの缶コーヒーのみ。

謀ったかのように黒いものに包まれた彼。

その所為か彼の放つオーラまでもダークな闇色に感じてしまう。

「姫花、どうしたの？」

乃愛の声に正面を向き直ると彼女は不思議そうに首を傾げていた。

「ううん、なんでもない」

私は曖昧な笑みを浮かべる。

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