紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
序章
【とある紅い狼】
「ちくしょ……う……化物め」
足元で転がる男はそう、おびえきった表情で声を震わせた。
『なさけな』
先にしかけてきたのはそっちだってのに。
鉄くさい血の臭いが鼻をかすめる。
俺は、男のすぐ脇に落ちている鉄パイプを、ゆっくりと拾い上げた。
「ひっ、ひいいいいっ」
途端、はじけたように男は背中を丸めて走りだす。
醜い。
どことなくゴキブリの走り方に似ている。
『……別に殴りゃしないっての』
お前じゃないんだから。
呆れながら男を見送る。
鉄パイプを持つコートの裾から、ポタポタと血が垂れる。
……あーあ、もらっちゃった。
痛いなあ。
今日は風呂入らんとこ。
ポイッと鉄パイプを投げ捨てると、コンクリートとぶつかって派手な高い音を響かせた。
『帰ろうかな』
遊びに行こうと思ったけど、この手でダーツしたら矢投げる度血が飛びそうだ。
店の人達のいい迷惑になりそ。
『ついてないな』
ボソっと呟いて、ゴミゴミとした路地を歩き出した。
「ちくしょ……う……化物め」
足元で転がる男はそう、おびえきった表情で声を震わせた。
『なさけな』
先にしかけてきたのはそっちだってのに。
鉄くさい血の臭いが鼻をかすめる。
俺は、男のすぐ脇に落ちている鉄パイプを、ゆっくりと拾い上げた。
「ひっ、ひいいいいっ」
途端、はじけたように男は背中を丸めて走りだす。
醜い。
どことなくゴキブリの走り方に似ている。
『……別に殴りゃしないっての』
お前じゃないんだから。
呆れながら男を見送る。
鉄パイプを持つコートの裾から、ポタポタと血が垂れる。
……あーあ、もらっちゃった。
痛いなあ。
今日は風呂入らんとこ。
ポイッと鉄パイプを投げ捨てると、コンクリートとぶつかって派手な高い音を響かせた。
『帰ろうかな』
遊びに行こうと思ったけど、この手でダーツしたら矢投げる度血が飛びそうだ。
店の人達のいい迷惑になりそ。
『ついてないな』
ボソっと呟いて、ゴミゴミとした路地を歩き出した。