紅狼Ⅰ《レッドウルフ》
なんとか勝ち取った昼飯を手に、カンカンと音を立てて階段を登る。
……別に、
教室に帰っても良かった。
ただ、休みがちな自分の席は、お昼になると別の女子グループに机ごと取られてしまって。
合体して、島の一部とされてしまう。
……いや、お昼食べるから返してって言えば返してくれるんだろうけど、……こう、言いにくいやん?
飯なんて何処でも食べれるし、彼女らの気分を害するのも悪い。
そもそも普段からサボりまくってる俺が原因だしな。
ガチャリと、少し重い鉄の扉を開けば、
視界いっぱいに青空が広がった。
『は〜!風が気持ちいいーー!』
やっぱ屋上はいい!
うん!
空が近いその場所は、一面の青を独り占めした気分になる。
ストンと建物脇に腰を下ろして、クリームパンを一口。
うみゃい。
幸せ!
「顔、ニヤけてるぜ、ワンコロ」
……。
ききたくない声が聞こえた気が。